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信号発生器(シグナルジェネレータ)とは?用途と使い方


信号発生器の必要性 

電子測定を行う場合に必要な機器としてまず思い浮かぶのは、おそらくオシロスコープ やロジック・アナライザ などのアクイジション計測器でしょう。しかし、これらの計測器は、何らかの信号を取り込むことができなければ役に立ちません。取り込むべき信号自体が存在せず、外部の信号発生器を用意しければならないケースも多くあります。

たとえば、歪みゲージ増幅器はセンサで受信した信号を増幅するだけで、それ自体が信号を生成することはありません。デジタル・アドレス・バス上のマルチプレクサも、カウンタやレジスタなどのデバイスからの信号トラフィックを処理するだけで、やはり信号は生成しません。しかし、増幅器やマルチプレクサを回路に接続するには、当然、事前のテストが必要です。アクイジション計測器でこれらのデバイスの動作を測定するには、デバイスに信号を加え動作させなければなりません。

また、新しいハードウェアの開発では、目的とする設計仕様を完璧に満たしてなお余裕があるかどうか、その動作を評価する必要があります。これのようなテスト(マージン・テスト またはリミット・テストと言う)では、信号生成能力と測定能力を併せ持つソリューションが必要です。デジタル信号を扱う機器を設計する場合とアナログまたはミックスド信号を扱う機器を設計する場合とでは使用するツールが異なっても、どちらもアクイジション計測器と信号発生器を必要とするという点では同じです。

信号発生器(信号ジェネレータ)はアクイジション計測器と対になる機器であり、この2つが揃って初めて完全な測定ソリューションになります。図1では、この2種類の計測器はDUT(被測定装置)の入出力端子のそばに置かれています。信号発生器は、設定をさまざまに変更することで、アナログ波形、デジタル・データ・パターン、変調、歪み、ノイズなどの信号を供給できます。設計、評価、トラブルシューティングを効果的に行うためには、ソリューションを構成するこの2つの機器が不可欠です。

ほとんどの測定では、アクイジション計測器と信号 発生器を組み合わせたソリューションが必要です。 トリガ接続により、DUT 出力信号の取り込みが簡 単になります。

本記事では、信号発生器の概要と役割、およびその用途について説明します。各種信号発生器とその機能を理解することは、研究者、エンジニア、測定技術者としての必須条件です。正しいツールを選択すれば、作業がはかどり、信頼できる結果をすぐに得ることができます。本記事では、以下の項目について説明します。

  • 信号発生器の動作原理
  • 信号波形の種類
  • ミックスド信号発生器とロジック信号発生器の違い
  • 信号発生器の基本的な操作方法
  • 簡単な波形の生成方法

信号発生器(シグナル・ジェネレータ)とは?

信号発生器とは、その名が示す通り、電子測定で被測定回路を動作させるために使用する信号源のことです。ほとんどの回路は、時間とともに振幅が変化する、ある種の入力信号を必要とします。信号は、グランド・リファレンス・ポイントの上下でピークが変動する、真の双極AC信号※1であることもあれば、DCオフセット電圧レンジを超えて正負のいずれかに変化することもあります。正弦波などのアナログ関数、デジタル・パルス、バイナリ・パターン、または任意の波形であることもあります。

信号発生器で生成できるのは「理想的」な波形だけではありません。既知の歪み(エラー)の量と種類を再現し、それらを出力信号に印加することもできます(図2参照)。これは信号発生器の最大の長所の1つです。非測定回路だけでは、必要とする(予測可能な)歪みを必要なタイミングと場所で再現することができない場合もよくあります。歪みのある信号をDUTに供給し、その応答を観察することにより、通常の性能範囲を超えるストレスがかかったときの耐久性を知ることができます。

※1「AC」は、通常、0V(グランド)リファレンス付近で正負に変動する信号を意味する用語で、電流の流れる方向が周期ごとに反転します。しかし、ここでは説明の便宜上、「AC」をグランドとは関係なく変動する信号として定義します。たとえば、+1~+3Vの間で変化する信号は、常に同じ方向に電流が流れますが、AC波形と解釈します。ほとんどの信号発生器は、グランド中心(真のAC)波形とオフセット波形のどちらでも生成できます。 

理想的な波形(上)と「実際」の波形(下)。汎用性のあ る信号発生器により、デバイスのストレス・テストや評価 のニーズに応じて、あらかじめ設定された歪みやアベレー ションを出力することができます。

アナログとデジタル

現在の信号発生器は、ほとんどがデジタル技術をベースにしています。最も効率的なソリューションと言えば、アナログまたはデジタルの用途に合わせてその機能を最適化させた信号発生器ですが、現在の信号発生器の多くはアナログとデジタルの両方に対応できます。

任意波形ジェネレータ(AWG)とファンクション・ジェネレータは、主に、アナログ/ミックスド信号用途向けです。これらの計測器は、サンプリング手法を利用して、考え得るほとんどすべての形状の波形を生成および変更できます。これらのジェネレータには、一般に1~4チャンネルの出力があります。一部のAWGは、サンプリングしたアナログ出力と別に、外部機器のトリガ などに使用できるマーカ出力と、サンプルごとのデータをデジタル形式で供給する同期デジタル出力を備えています。

デジタル波形ジェネレータ(ロジック信号発生器)には、パルス・ジェネレータ とパターン・ジェネレータの2種類があります。パルス・ジェネレータは、少数のチャンネル出力から、通常は非常に高い周波数の方形波またはパルスを発生し、高速デジタル機器の動作テストに最も一般的に使用されます。パターン・ジェネレータは、データ・ジェネレータ、データ・タイミング・ジェネレータとも呼ばれ、一般に、8、16、またはそれ以上の同期デジタル・パルス列を、コンピュータ・バスやデジタル・テレコム部品などに供給します。

. 信号発生器では、標準波形やユーザ定義波形、または取り込んだ波形の特定の部分に、テストで必要とされる障害を加えることがで きます。

信号発生器の用途

信号発生器には実に多くの用途がありますが、電子測定関連では、検証、評価、ストレス/マージン・テストという3つの基本的なカテゴリに分類できます。代表的な用途は次のとおりです。

検証

デジタル変調送受信機のテスト 

新しい送信機や受信機の開発、設計では、ベースバンドのI&Q信号を異常ありと異常なしの2通りでシミュレートし、新しい無線標準規格との適合性を検証する必要があります。任意波形ジェネレータの上位機種では、歪みの少ない高分解能信号を1ギガビット/秒(1Gbps)のデータ・レートまで生成し、「I」位相と「Q」位相の独立した2チャンネルに信号を供給することができます。

受信機のテストでは、実際のRF信号を使用しなければならないこともありますが、これに必要なRF信号は、最大サンプル・レート20GS/sの任意波形ジェネレータであれば直接合成することができます。

評価

D/AおよびA/Dコンバータのテスト

新開発のD/Aコンバータ(DAC)とA/Dコンバータ(ADC)については徹底的にテストを行い、リニアリティ、モノトニシティ、および歪みの限界を確認する必要があります。最先端のAWGでは、同時同相のアナログ/デジタル信号を生成し、これらのデバイスを最高1Gbpsの速度で駆動することができます。

ストレス/マージン・テスト

通信レシーバに対するストレス追加 

シリアル・データ・ストリーム・アーキテクチャ(デジタル・コミュニケーション・バスやディスク・ドライブ増幅器で幅広く使用されています)を担当しているエンジニアは、デバイスに機能障害、特にジッタ 違反やタイミング違反を発生させて、ストレスを付加する必要があります。ジッタ編集、生成ツールを備えた高度な信号発生器を利用すると、計算に要する時間を大幅に節約できます。これらの計測器は、200fs(0.2ps)というほんのわずかな時間でも信号エッジをシフトできます。

信号生成の分類

信号発生器による波形生成には、何通りか方法があります。そのどれを使用すべきかは、DUTとその入力要件に関する情報、つまり、歪みやエラー信号、その他の変数を追加する必要性の有無に依存します。最近の高性能信号発生器には、波形生成に少なくとも次の3つの分類があります。

  • 作成: 回路のシミュレーションやテストなどの目的に新規で作成されます。
  • 再生: オシロスコープ、ロジック・アナライザ、リアルタイム・スペクトラム・アナライザなどで取り込んだ信号を、直接あるいは編集した信号で出力します。
  • 生成: 標準規格に準拠した理想信号またはストレス信号を出力します。規格値からの許容範囲の設定等も行えます。

 

信号発生器と波形

波形の特性

「波」とは、量的な値が一定の時間間隔で反復して変化するパターンです。波には、音波や脳波、海波、光波、電圧波など、いろいろな種類がありますが、そのどれも周期的な反復現象であるという点で本質は同じです。信号発生器では、電気的な波(通常、電圧波)の繰り返しを制御して生成することができます。波の繰り返しの1回分を「サイクル」と呼びます。波形は、時間と共に変化する波の動きを視覚的に表したものです。電圧波形は、水平軸に時間、垂直軸に電圧を持つ、古典的な直交座標系のグラフィカルな表現です。なお、計測器によっては、電流波形や電力波形などについても、取り込みおよび生成が可能なものがありますが、本書では、通常の電圧対時間の波形のみを説明対象とします。

振幅、周波数および位相

波形には多くの特性がありますが、その中でも重要なのが振幅、周波数、そして位相です。

・振幅: 波形の電圧の「強さ」の尺度。AC信号の振幅は絶えず変化しています。信号発生器では、電圧レンジをたとえば-3~+3Vという具合に設定し、この2つの電圧値の間で変動する信号を生成することができます。ただし、変動率は波形の形状と周波数の両方で決まります。

・周波数: 完全な波形サイクルが発生するレートです。周波数の単位はヘルツ(Hz)です(以前はサイクル/秒と呼ばれていました)。周波数は、波形の周期(波長)の逆数です。波長は、隣接する波の相似したピーク間の距離で測定します。周波数が高くなるほど、周期は短くなります。

・位相: 理論的には、0°ポイントを基準にした波形サイクルの変位です。実際には、リファレンス波形または時間の基準点に対するサイクルの時間的ずれが位相です。

位相については、正弦波を見ると最もよくわかります。正弦波の電圧レベルは、数学的には円運動に関係しています。完全な円のように、正弦波の1サイクルは360°運動しています。正弦波の位相角は、周期がどのくらい経過したかを表します。

2つの波形の周波数と振幅が同一でも、位相が異なる場合があります。位相シフトは遅延とも呼ばれ、図4に示すように、周波数と振幅が同一の2つの信号のタイミングのずれを表します。位相シフトは、電子機器では頻繁に発生します。

波形には振幅、周波数、位相という基本パラメータがありますが、これらを用途に合わせて変更することで最適な波形が得られます。これ以外にもさまざまなパラメータがあり、多くの信号発生器では、これらについても変更が可能です。

位相シフト(遅延)は 2 信号間のタイミングずれです。 位相は、通常、図に示すように度で表されますが、時間値 の方が適切な場合もあります。

立上りおよび立下り時間

通常、パルスと方形波の特性である立上り時間と立下り時間とも呼ばれるエッジのトランジション時間は、信号エッジにおいてある状態から別の状態に遷移するまでの時間を測定したものです。これらの値は、最近のデジタル回路では数ナノ秒(ns)以下です。

立上り時間と立下り時間は、どちらもトランジション前後の静的電圧レベルの10~90%間で測定されます(20~80%を使用することもあります)。図5に、パルスとそのパラメータをいくつか示します。この図は、オシロスコープ上に表示されるイメージで、信号周波数に比べてサンプル・レートを高く設定しています。サンプル・レートが低いほど、この波形はより「方形」に近くなります。

パルスの立上り時間と立下り時間を個別に変えることもあります。たとえば、非対称のスルー・レートを持つ増幅器を測定する場合や、レーザ・スポットの溶接ガンの冷却時間を制御する場合などがあります。

基本的なパルス特性。

パルス幅

パルス幅とは、パルスのリーディング・エッジからトレーリング・エッジまでの経過時間のことです。「リーディング」は、正に向かうエッジと負に向かうエッジのどちらかを特定する用語ではありません。これは、「トレーリング」についても同様です。つまり、「リーディング」も「トレーリング」も、サイクル内でのイベント発生順序を表すだけであって、パルスの極性によってエッジがリーディングとトレーリングのどちらになるかが決まるということではありません。図5では、正に向かうエッジをリーディング・エッジとしています。パルス幅は、各エッジの50%振幅点間の時間測定値です。

「デューティ・サイクル」という用語もありますが、これは、パルスのハイとロー(オン/オフ)の時間間隔を表します。図5は、50%のデューティ・サイクルの例です。100ns周期のサイクルで、アクティブ・ハイ(オン)レベルが60%であれば、デューティ・サイクルは60%になります。

デューティ・サイクルの具体例を示すために、1秒間のバースト後に3秒間休止するアクチュエータを考えてみましょう。このアクチュエータは、4秒のうち3秒間は休止するので、デューティ・サイクルは25%になります。

オフセット

すべての信号の振幅が、グランド(0V)を基準として変化するわけではありません。「オフセット」電圧とは、回路グランドと、信号振幅の中心との電圧差です。オフセット電圧は、図6に示すように、ACとDCの両方を含む信号のDC成分を表します。

オフセット電圧は、AC 値と DC 値の両方を含む信号の DC 成分です。

差動信号とシングルエンド信号

差動信号とは、互いに補完し合う2つの信号経路を使用して、それぞれ同一でグランドに対して極性が反転している信号を伝える方法です。信号のサイクルが進み、一方の信号が正に振れたとき、もう一方の信号は同じだけ負に振れます。たとえば、ある瞬間に一方の信号の電圧が+1.5Vであったとすると、もう一方の信号の電圧は-1.5Vちょうどになります(2つの信号が完全に同相であったと仮定した場合)。差動信号は、クロストークとノイズを排除し、有効な信号のみを通過させる優れた方法です。

シングルエンド動作は、信号経路とグランドを1つしか使用しない一般的な方法です。図7に、シングルエンド信号と差動信号の両方を示します。

シングルエンド信号と差動信号。

基本波形

波形にはさまざまな形があります。ほとんどの電子測定では、次に示す波形のどれかを使用し、必要に応じてノイズや歪みを追加することもあります。

  • 正弦波
  • 方形波と矩形波
  • のこぎり波と三角波
  • ステップ波とパルス波
  • 複雑な波形

正弦波

正弦波は、おそらく最もわかりやすい波形です。ほとんどのAC電源は正弦波です。家庭用のコンセントからは、正弦波の電源が供給されます。また、電気や電子の初等教育では、通常、原理の説明に正弦波が使用されます。正弦波は、基本的な数学関数の演算結果で、正弦曲線を360°にわたってグラフに表すと、正弦波のイメージが完成します。

減衰正弦波は、回路がインパルスで発振し、時間をかけて徐々に減衰する特殊なケースです。

図8に、正弦波と減衰正弦波信号の例を示します。

正弦波と減衰正弦波。

方形波および矩形波

方形波と矩形波は、デジタル電子機器の中核となる基本波形で、その他の用途にも使用されています。方形波は、2つの固定電圧レベル間を等間隔で切り替わる信号です。これは、2つの電圧レベル間の高速なトランジション(前に説明した立上り時間と立下り時間)を再現する必要がある増幅器のテストによく使用されます。方形波は、コンピュータ、無線通信機器、HDTVシステムなどのデジタル・システム用のクロックとしても使用されます。

矩形波は、方形波と同様のスイッチング特性を持っていますが、前述の「デューティ・サイクル」で説明したように、そのハイとローの時間間隔が等しくありません。図9に、方形波と矩形波の例を示します。

方形波と矩形波。

のこぎり波と三角波

のこぎり波と三角波は、その名前の通り、非常によく似た幾何形状をしています。のこぎり波は、各サイクルでゆっくり均等にピークまで上り、その後、即座に落ち込みます。三角波は対称的な立上り時間と立下り時間を持っています。これらの波形は、アナログ・オシロスコープやTVなどのシステム内で、電圧を制御するために使用されます。図10に、のこぎり波と三角波の例を示します。

こぎり波と三角波。

ステップ波とパルス波

「ステップ波」は、電源ボタンを押したときと同じように、電圧が急激に変化する波形です。

「パルス波」は矩形波と同類です。矩形波のように、2つの固定電圧レベル間で、上から下へ、または下から上へスイッチングすることによって生成されます。パルスは本質的にバイナリであるため、デジタル・システムで情報(データ)を搬送する基本的手段として利用できます。パルスは、コンピュータ中を移動する1ビットの情報を表します。同時に移動するパルスが集まったものがパルス列(パルス・トレインやパルス・ストリームという表現もあります)です。パラレルまたはシリアルで送信されるパルス列の同期したグループがデジタル・パターンを構成します。図11に、ステップ波、パルス波、そしてパルス列の例を示します。

デジタル・データは、名目上はパルス波、矩形波、および方形波で構成されますが、実際のデジタル波形は、角が丸みを帯びていて、エッジは斜めになっています。

回路の異常が原因でパルスが発生することもあります。これらの不定期に発生するトランジェント信号のことを「グリッチ」と言います。デジタル・トラブルシューティングでは、グリッチ・パルスと、幅の狭い正常なデータ・パルスとを見分けられるかどうかが重要です。そのテストのため、任意の位置にグリッチを印加してパルス信号を生成することのできる信号発生器もあります。

ステップ波、パルス波、パルス列。

複雑な波形

実際の電子システムでは、前述のような教科書通りの波形が現れることはめったにありません。特定のクロック信号やキャリア信号は純粋な形状ですが、その他のほとんどの波形では、分散したキャパシタンスやクロストークなど、実際の回路動作の副作用で偶発的に生じたなんらかの歪みをもったものや、意図的に変調が行われたものがあります。波形の中には、正弦波、方形波、ステップ波、パルス波の要素をすべて含むものさえあります。

複雑な波形には、次のようなものがあります。

  • アナログ変調、デジタル変調、パルス幅変調、および直交変調信号
  • デジタル・パターンとデジタル・フォーマット
  • 擬似ランダム・ビットとワードのストリーム

信号変調

信号変調では、振幅、位相、周波数の変動により、低周波信号の情報が周波数が高い搬送波に組み込まれます。変調後の信号は、音声から映像、データに至るまで、どのようなものでも搬送できます。これらの波形の再現は、それ専用の機能を備えた信号発生器を使用しない限り、困難です。

アナログ変調 – 振幅変調(AM)と周波数変調(FM)は、放送で広く使用されています。変調信号は、搬送波の振幅や周波数を変化させます。受信端では、復調回路が振幅や周波数の変化を解釈して搬送波から内容を抽出します。

位相変調(PM)は、搬送波の周波数ではなく、位相を変調して内容を組み込みます。

図12にアナログ変調の例を示します。

振幅変調。

デジタル変調 – デジタル変調は、他のデジタル技術と同様に、2つのステートでバイナリ・データを表現する信号を基本にしています。振幅シフト・キーイング(ASK)では、デジタル信号変調で搬送波が2つの振幅間でスイッチします。周波数シフト・キーイング(FSK)では、搬送波が2つの周波数(中心周波数とオフセット周波数)間でスイッチし、位相シフト・キーイング(PSK)では、搬送波が2つの位相間でスイッチします。PSKでは、「0」は前の信号と同じ位相の信号を送信することによって表され、「1」は逆位相の信号を送信することによって表されます。

パルス幅変調(PWM)も、もう一つの一般的なデジタル変調方式で、デジタル・オーディオ・システムでよく使用されています。名前が示すように、パルス波形にのみ適用され、PWMでは、信号変調でパルスのアクティブなパルス幅(前述のデューティ・サイクル)が変化します。

図13にデジタル変調の例を示します。

周波数シフト・キーイング(FSK)変調。

周波数掃引

電子デバイスの周波数特性測定には、時間の経過とともに周波数が変化する、「掃引」正弦波を必要とします。周波数は、直線的に変化するものと、対数的に変化するものがあります。上位機種の掃引ジェネレータには、掃引シーケンスのスタート周波数、保持周波数、ストップ周波数、および関連する時間を選択できるものもあります。信号ジェネレータは、掃引に同期したトリガ信号を供給し、デバイスの出力応答を測定するオシロスコープをコントロールします。

直交変調 – 現在のデジタル無線通信ネットワークは、直交(IQ)変調技術を基礎に構築されています。同相(I)波形と直交「Q」波形(「I」波形に対して正確に90°遅延された波形)の2つの搬送波が変調されて、4ステートの情報が生成されます。2つの搬送波は合成されて1つのチャンネルで送信され、受信端で分離、復調されます。IQフォーマットは、他のアナログ変調やデジタル変調よりも、はるかに多くの情報を伝送できます。これにより、システムで使用できる有効帯域幅を増やすことができます。図15に、直交変調を示します。

デジタル・パターンとデジタル・フォーマット

デジタル・パターンは、複数の同期したパルス列から構成されます。これらのパルス列は「ワード」を形成し、そのビット幅は、8、12、16、あるいはそれ以上といろいろあります。信号発生器の一種類であるデジタル・パターン・ジェネレータは、パラレル出力からデジタル・バスにデータ・ワードを出力します。このパターン内のワードは、各サイクルで規則正しく送信され、各サイクル内の各ビットの動作は、選択した信号フォーマットによって決まります。そして、このフォーマットによって、データ・ストリームを構成するサイクル内のパルス幅が決まります。

次に、最も一般的なフォーマットを簡単に説明します。最初の3つのフォーマットの説明では、サイクルが2進の「0」で始まるものと仮定しています。「0」は論理電圧レベルのローを意味します。

Non-Return-to-Zero(NRZ): サイクル内で有効なビットが発生すると、波形は「1」に切り替わり、次のサイクル境界までその値を維持します。

DelayedNon-Return-toZero(DNRZ): 基本的にNRZと同じですが、指定された遅延時間が経過すると波形が「1」に切り替わるという点が異なります。

Return-to-Zero(RZ): 有効なビットが発生すると波形は「1」に切り替わりますが、その後に同じサイクル内で「0」に戻ります。

Return-to-One(R1): 事実上、RZの逆です。上記の他のフォーマットとは異なり、サイクルが「1」で始まるものと仮定します。有効なビットが発生すると「0」に切り替わり、サイクルの終了前に「1」に戻ります。

ビット・ストリーム

擬似ランダム・ビット・ストリーム(PRBS)と擬似ランダム・ワード・ストリーム(PRWS)は、デジタル・コンピュータの本質的な限界、つまり、真の乱数を生成できないという欠点を補うためのものです。ランダム・イベントには、今でもデジタル・システムで便利な用途があります。たとえば、完全に「クリーン」なデジタル・ビデオ信号では、ラインにギザギザが生じたり、本来滑らかであるはずの表面に等高線状の段差が目立つことがあります。調整された量のノイズを追加することにより、基となる情報を劣化させずに、これらのギザギザや段差を目立たなくすることができます。

このランダム・ノイズを生成するために使用されているのが、乱数のようでありながら実際には予測可能な数学的パターンに従っている数列です。この「擬似乱数」の実体は、不規則に繰り返されるシーケンスの集まりであり、その結果がPRBSとなります。擬似ランダム・ワード・ストリームは、信号発生器のパラレル出力から出力される複数のPRBSを定義します。

PRWSは、シリアライザやマルチプレクサのテストでよく使用されます。これらの要素は、PRWS信号を擬似ランダム・ビットのシリアル・ストリームに再構成します。

信号発生器の種類と使い方

信号発生器には、大きく分けて、ミックスド信号発生器(任意波形ジェネレータと任意波形/ファンクション・ジェネレータ)とロジック・ソース(パルス・ジェネレータまたはパターン・ジェネレータ)があり、あらゆる信号生成ニーズに対応しています。各信号発生器には、それぞれ独自の特長があり、おおよその適合用途があります。

ミックスド信号発生器は、アナログ特性を持つ波形を出力するように設計されています。たとえば、正弦波や三角波などの基本波形や、エッジ部分が丸みを帯びた歪んだ「方形」波を出力できます。汎用のミックスド信号発生器では、振幅、周波数、位相を始め、DCオフセット、立上り時間、立下り時間を設定できます。オーバシュートなどのアベレーションを作成することや、エッジのジッタ、変調などを印加することもできます。

本来、デジタル・ソースは、デジタル・システムを駆動することを目的としたものであり、その出力は2進パルス列です。デジタル専用の信号発生器であるため、正弦波や三角波は生成できません。デジタル・ソースの機能は、コンピュータ・バスのようなデジタル・バスのテストに最適化されています。これらの機能には、パターン開発を早めるソフトウェア・ツールを始め、各種ロジック・ファミリに適合するように設計されたプローブなどのハードウェア・ツールも含まれます。

先にも述べたように、現在のほとんどすべての高性能信号発生器は、ファンクション・ジェネレータから任意波形ジェネレータ、パターン・ジェネレータに至るまで、デジタル・アーキテクチャをベースにしており、柔軟な操作性と非常に優れた信号精度が得られます。

アナログおよびミックスド信号発生器の種類

アナログおよびミックスド信号発生器の種類をご紹介します。

任意ジェネレータ

従来、波形生成には、専用の信号発生器が使用されて来ました。生成する波形に応じて、低歪みオーディオ正弦波ジェネレータや、数GHzのRF信号ジェネレータなどを個別に用意する必要がありました。現在、さまざまな信号発生器が市販されていますが、プロジェクトによっては適した信号発生器を見つけることができず、独自の信号発生器をカスタム設計したり、改良したりしているユーザも多くいます。しかし、計測器品質の信号ジェネレータを設計するのは非常に困難です。また、機器の設計という本来目的とは異なる作業に費やされる時間は、当然プロジェクト自体にとって高価な代償となります。

幸い、デジタル・サンプリング技術と信号処理技術の発達により、1台だけで信号生成のほとんどすべてのニーズに対応できるソリューションが登場しました。それが、任意ジェネレータです。任意ジェネレータは、任意波形/ファンクション・ジェネレータ(AFG)と任意波形ジェネレータ(AWG)に分類できます。

任意波形/ファンクション・ジェネレータ(AFG)

任意波形/ファンクション・ジェネレータ(AFG)は、幅広い信号生成ニーズに対応でき、事実、今日の業界に広く普及しています。一般的に、AFGは等価のAWGと比較すると、生成できる波形の種類では劣りますが、安定性に優れ、周波数変化に対する応答が速いという特長があります。DUTが正弦波と方形波の間で、あるいは2つの周波数間でほとんど瞬時に切り替わる能力を必要とする場合、任意波形/ファンクション・ジェネレータ(AFG)は最適なツールです。AFGのもう一つの利点は低コストで、AWGの汎用性が不要な用途では非常に魅力的です。

AFGは専用機として設計されていますが、AWGとほとんど同じ機能を備えています。AFGには、安定した標準波形(特に重要な正弦波と方形波)を正確に、しかも迅速に生成できるという強みがあります。「迅速」とは、ある周波数から別の周波数にすばやく、きれいに変更できる能力です。

一般的なAFGであれば、次のような波形を生成することができます(機種によってはサポートしていない波形もあるかもしれません)。

  • 正弦波
  • 方形波
  • 三角波
  • 掃引波
  • パルス波
  • ランプ波
  • 変調波
  • ハーバーサイン波

もちろん、AWGでもにこれらの波形は生成できます。しかし、最新のAFGには、出力信号の振幅、周波数、位相を簡単に設定できるという利点があります。さらに、多くのAFGには内部または外部の信号発生器から変調して、ある種の規格コンプライアンス・テストには欠かせない信号を生成する方法が用意されています。

従来のAFGは、アナログ・オシレータと信号処理を使用して出力信号を生成していました。最近のAFGは、DDS(DirectDigitalSynthesis)技術により、メモリからサンプルをクロック読み出しするレートを決定しています。

DDSとは、単一のクロック周波数を使用して、機器の動作レンジ内の任意の周波数を発生させ、波形を合成する技術のことです。図16に、DDS技術を採用したAFGの構造を簡単に示します。

位相アキュムレータ回路では、デルタ(∆)位相レジスタが、次のサイクルで出力信号が進む位相増分を示す命令を、周波数コントローラから受け取ります。最近の高性能AFGでは、位相分解能は230分の1、つまり、およそ1,000,000,000分の1になります。

位相アキュムレータの出力は、AFGの波形メモリ部分のクロックとして機能します。その動作はAWGとほとんど同じですが、波形メモリには正弦波や方形波などの基本的な信号しかストアされていないという点で大きく異なります。アナログ出力回路は、基本的には固定周波数のロー・パス・フィルタで、AFGが出力する所定のプログラムされた周波数(クロックの影響はありません)だけを保証します。

位相アキュムレータの周波数生成方法を理解するため、コントローラが30ビットの∆位相レジスタに1の値を送信する場面を考えてみましょう。位相アキュムレータの∆出力レジスタは、サイクルごとに360°÷230だけ進みます。これは、計測器が出力する1サイクルが360°で表されるためです。したがって、∆位相レジスタの値が1の場合、AFGレンジで最小の周波数が生成されます。回路の周波数は、新しい値が∆位相レジスタに読み込まれるまでは、そのままになります。

値が1より大きい場合、より早く360°まで進み、出力周波数が高くなります(異なるアプローチを採用するAFGもあります。その場合は、数サンプル飛ばして、メモリ内容を速く読み取ることにより、出力周波数を増加させます)。変化するのは周波数コントローラによって供給される位相値だけです。メイン・クロックの周波数は、変更する必要がまったくありません。さらに、波形は波形サイクルの任意のポイントから開始できます。

たとえば、サイクルの正に向かう部分のピークで始まる正弦波を生成する必要があるとします。簡単な計算により、このピークは90°で発生することがわかります。したがって、次のようになります。

230分の増加=360°かつ、

90°=360°÷4なので

90°=230÷4

 

位相アキュムレータは(230÷4)と等しい値を受け取ると、波形メモリに対して、正弦波の正のピーク電圧を含む位置から開始するよう指示します。

一般的なAFGでは、メモリの事前書き込み部分に基本的な波形がいくつかストアされています。その中でも、多くのテスト用途に使用されているのが、正弦波と方形波です。任意波形はメモリの書き換え可能部分に保持されます。波形形状は、従来のAWGと同様、柔軟に定義することができます。しかし、DDSアーキテクチャでは、メモリ・セグメンテーションや波形シーケンス機能はサポートされていません。これらの先進機能が装備されているのは、高性能のAWGに限られます。

DDSベースの構造では、優れた応答性が得られるため、周波数と位相の両方の変更をすばやく簡単にプログラムできます。この応答性はあらゆる種類のFMDUT、たとえばラジオや衛星通信システムのコンポーネントをテストする際に便利です。また、AFGの周波数レンジが十分な場合は、FSKやGSMのような周波数ホッピングのテストに最適な信号発生器となります。

AWGのように事実上すべての波形を生成できるとまではいきませんが、AFGは多くの研究所、修理工場、設計部門で必要とされる一般的なテスト信号を生成できます。さらに、優れた周波数俊敏性が得られます。もう一つ重要なことは、AFGは業務を遂行する上で非常に費用効果が高いことです。

任意波形ジェネレータ(AWG)

ディスク・ドライブ評価用のローレンツ・パルスで正確に形成されたデータ・ストリームや、GSMまたはCDMA方式の携帯電話をテストするための複雑な変調RF信号が必要になった場合など任意波形ジェネレータ(AWG)は想像できる限りの全ての波形を出力できます。必要な波形の作成には、さまざまな方法、例えば、数式から「ドローイング」が使用できます。

基本的に、任意波形ジェネレータ(AWG)は、ストアされたデジタル・データに基づいて電圧レベルを変化させることにより波形を生成する、高機能なプレイバック・システムです。ブロック図は一見簡単そうに見えます。AWGの概念を簡単に説明すると、ストアされたデータをリアルタイムで読み出すCDプレーヤとよく似ています(AWGの場合は内蔵の波形メモリ、CDプレーヤではディスク自身)。

AWGを理解するには、まずデジタル・サンプリングの広範な概念を把握する必要があります。デジタル・サンプリングとは、その名の通り、サンプル・データ・ポイントを使用して信号を定義することです。これらのサンプルは、オシロスコープなどの計測器で波形を実際に取得したり、またはグラフィック・ツールや演算によって定義されたりします。図17(左)に一連のサンプル・ポイントを示します。すべてのポイントは、曲線のために間隔が異なって見えますが、一定の時間間隔でサンプリングされます。AWGでは、サンプリングされた値は、高速のランダム・アクセス・メモリ(RAM)にストアされます。

ストアされた情報をもとに、メモリ位置を読み直し、D/Aコンバータ(DAC)経由でデータ・ポイントを送出することで、いつでも信号を再構成できます。図17(右)にその結果を示します。ここで注目すべきは、AWGの出力回路は、ポイント間にフィルタをかけてドットをつなぎ、クリーンで途切れのない波形を生成しているということです。こらのドットは、DUTにとっては離散ポイントではなく、事実上、連続したアナログ波形と同じです。

図18に、これらの動作を実現するAWGの簡略化したブロック図を示します。

AWGは、どんな機器も真似のできない高い汎用性を実現しています。AWGはあらゆる波形を生成できる能力により、自動車のアンチロック・ブレーキ・システムのシミュレーションから、無線ネットワークのストレス・テストまで、さまざまな用途に対応できます。

ミックスド信号発生器の使い方

完全な測定ソリューションを形成する信号ジェネレータでは、多様な波形をスピーディに作成して妥協のない忠実な波形を出力できるよう、その操作パネルとサブシステムが設計されています。

最も基本的で、頻繁に設定を変更する必要がある信号パラメータは、前面パネルにある専用のボタンと汎用ノブまたはテン・キーで操作できます。より複雑な設定や、あまり頻繁に使用しない設定は、ディスプレイ画面のメニューで操作できます。

レベル操作部では、出力信号の振幅やオフセット・レベルを設定します。図19に示す信号発生器では、前面パネルの専用のボタンと汎用ノブまたはテン・キーにより、振幅とオフセットを簡単に設定できます。わずらわしいメニュー操作は必要ありません。

タイミング操作部では、サンプル・レートを制御して出力信号の周波数を設定します。また、必要な時間パラメータを簡単に設定できるハードウェアの専用ボタンもあります。なお、上記のパラメータでは、ミックスド信号発生器が生成する波形の形状は制御できません。タッチ・パネルやマウスを使って興味のある部分を選択すると、シーケンス定義用のコントロールやデジタル出力の設定項目が表示されます(図20を参照)。このページでは、数値キーや汎用スクロール・ノブを使って空欄に入力することで設定が行えます。

ミックスド信号発生器に関する用語と性能

次に、ミックスド信号発生器の性能を表すパラメータについて簡単に説明します。信号発生器やその用途に関するカタログ、リファレンス・ブック、チュートリアルなど、参考文献をお読みになるときに参考にしてください。

メモリ容量(レコード長)

メモリ容量またはレコード長は、クロック周波数と密接な関係があります。メモリ容量は、ストアできるサンプルの最大数を決定します。すべての波形サンプル・ポイントは、メモリを占有します。各位置は、設定されたクロック周波数におけるサンプル間隔の時間値と同じとみなされます。たとえば、クロックが100MHzで動作している場合、ストアされるサンプルは、10nsごとの間隔になります。

波形を定義するために何ポイントのデータがストアできるかが決まるので、ほとんどの場面で信号の忠実度を決定する重要な役割を果たしています。特に複雑な波形では、メモリ容量は信号の詳細を正確に再現するために重要です。大容量メモリには次のような利点があります。

  • 希望する波形のサイクルをより多くストアできます。そのうえでシーケンス機能を使用して各種の波形を柔軟に組み合わせ、ループ、パターン、その他を無限に作成することができます。
  • 波形をより詳細に再現できます。複雑な波形では、パルスのエッジやトランジェントに高周波数情報を持たせることができます。これらの高速トランジションを補間するのは困難です。複雑な信号を忠実に再現するには、多数のデータ・ポイントでトランジションを構成する必要があります。

高性能のミックスド信号発生器は、大きなメモリ容量(長いレコード長)と高いサンプル・レートをサポートしており、擬似ランダム・ビット・ストリームなどの複雑な波形をストアし、再現することができます。同様に、大きなメモリ容量を備えた高速の信号発生器は、非常に高速なデジタル・パルスやトランジェントを生成できます。

サンプル(クロック)レート

通常、サンプル・レートは、メガ・サンプル/秒またはギガ・サンプル/秒で指定され、機器が動作可能な最大クロック・レートまたはサンプル・レートを示します。サンプル・レートは、出力信号の周波数と忠実度に影響します。ナイキスト・サンプリング定理では、信号を正確に再現するには、サンプリング周波数(クロック・レート)は、生成する信号の最も高いスペクトラム周波数成分の2倍以上でなければなりません。たとえば、1MHzの正弦波信号を生成するには、2メガ・サンプル/秒(MS/s)を超える周波数でサンプル・ポイントを生成する必要があります。この定理は通常、アクイジション計測器の選択基準として扱われていますが、オシロスコープの場合と同様に、信号発生器の選択基準としても通用します。希望する信号を忠実に再現するには、ストア波形のポイント数は十分でなければなりません(周波数を再現するには、ナイキストの定理により、2倍のサンプリング周波数が最低条件です。波形形状を忠実に再現するには、4、8、16倍などのようにより多くのサンプリング周波数が必要です)。

信号発生器は、これらのポイントを取得し、指定限度内の周波数でメモリから読み出すことができます。ストアされたポイントの集合がナイキスト定理を満足した正弦波を定義している場合、信号発生器は適切にフィルタし、正弦波を出力します。

信号発生器が生成できる波形の周波数は、簡単な数式で計算できます。メモリ内に1波形サイクルがストアされている計測器を例に説明します。

クロック周波数が100MS/s、メモリ長またはレコード長が4000ワードとします。この場合、次のようになります。

この場合、次のようになります。

Foutput=クロック周波数÷メモリ長

Foutput=100,000,000÷4000

Foutput=25,000Hz(または25kHz)

図22に、この概念を示します。

前述のクロック周波数では、サンプルは約10ns間隔になります。これが波形の時間分解能(水平軸)です。振幅分解能(垂直軸)と混同しないよう注意する必要があります。

このプロセスを一歩進め、メモリに波形の1サイクルでなく、4サイクルが含まれていると仮定します。

Foutput=(クロック周波数÷メモリ長)×(メモリのサイクル数)

Foutput=(100,000,000÷4000)×(4)

Foutput=(25,000Hz)×(4)

Foutput=100,000Hz

新しい周波数は100kHzになります。図23にこの概念を示します。

周波数帯域

計測器の周波数帯域は、サンプル・レートと無関係なアナログ用語です。信号発生器の出力回路が十分なアナログ帯域を備えていなければ、そのサンプル・レートでサポートできる最高周波数を扱うことはできません。言い換えると、信号の性能を劣化させずに、メモリからクロックで読み出した最高周波数と最小トランジション時間を持つ信号を通過させるには、十分な周波数帯域が必要です。図24に示すオシロスコープの画面には、適切な周波数帯域の重要性が示されています。一番上の波形は十分な周波数帯域を備えた信号発生器で出力した信号で、立上り時間の早いステップ波が得られますが、他の波形は周波数帯域が不足しているため、ステップ波の立上り時間は遅くなります。

垂直軸(振幅)分解能

ミックスド信号発生器の場合、垂直軸分解能は計測器が搭載しているDAコンバータのバイナリ・ワード・サイズ(ビット数)に関係し、ビット数が多いほど高分解能になります。D/Aコンバータの垂直軸分解能によって、再現する波形の振幅精度と歪みが決まります。分解能が不十分なDAコンバータは量子化誤差を助長し、不完全な波形を生成する原因になります。

ビット数は多いほど良い結果が得られますが、AWGの場合、高周波機器の分解能は一般的に8または10ビットで、汎用計測器の12または14ビットより低い値になっています。分解能が10ビットのAWGでは、計測器の電圧レンジ全体のサンプル・レベルは1024です。たとえば、この10ビットAWGのトータル電圧レンジが2Vp-pの場合、アーキテクチャの外部要因(出力アンプのゲインやオフセットなど)の制約を受けないと仮定すると、各サンプルのステップはおよそ2mV(外部アッテネータなしで出力できる最小ステップ)になります。

水平軸(タイミング)分解能

水平軸分解能は、波形の生成に使用できる最小の時間ステップを表します。一般的に、次の計算式で求められます。

T=1/F

Tは時間分解能(秒単位)で、Fはサンプリング周波数です。

この定義によると、最大クロック・レートが100MHzの信号発生器の時間分解能は10nsになります。つまり、このミックスド信号発生器から出力される波形は、10ns間隔で定義されているということになります。

シフト/ローテート

シフト/ローテート機能は、波形の特定のエッジを左右、またはプログラムされた中心値に近づく方向あるいは離れる方向にシフトします。シフト量がサンプリング間隔より小さい場合、シフトした値を導き出するために、オリジナル波形はデータ補間を使用して再サンプリングされます。

シフト/ローテートを使用すると、ジッタ状況の作成や、計測器の分解能を超える細かなエッジ配置の変更が可能になります。ここで再びクロックが100MHzの信号発生器を例に考えてみましょう。ジッタの効果をシミュレートしようとして10nsステップで波形のエッジをシフトするのは無意味です。それは、実際のジッタがそれより速いピコ秒単位で動作するからです。シフト/ローテートでは、実際のジッタ現象により近い数ピコ秒ずつのエッジ移動が可能です。

出力チャンネル

多くのアプリケーションでは、信号発生器に複数チャンネルの出力を必要とします。たとえば、自動車のアンチロック・ブレーキ・システムをテストするには、明らかに4つの信号が必要となります。生体物理研究のアプリケーションでは、人体内部で生成される各種の電気信号をシミュレートするため、複数の信号が必要となります。また、複雑なIQ変調を行う通信機器では、2つの位相に対し別個の信号が必要となります。

こうしたニーズに応えるため、さまざまな出力チャンネル構成を備えたAWGが出現しました。AWGの中には、フル周波数帯域のアナログ信号を4チャンネルまで出力できるものがあります。その他、ミックスド信号テスト用に2チャンネルのアナログ出力と、16チャンネルの高速デジタル出力の両方を備えているものもあります。後者のAWGでは、デバイスのアナログ・バス、データ・バス、およびアドレス・バスの信号を1台で生成することができます。

デジタル出力

AWGの中には、アナログ出力とは別にデジタル出力を備えているものがあります。これらの出力は、マーカ出力とパラレル・データ出力の2種類に分類されます。

マーカ出力は、メインのアナログ出力信号と同期したバイナリ信号を供給します。通常、マーカを使用し、特定の波形メモリ位置(サンプル・ポイント)と同期したパルスを出力できます。マーカ・パルスを使用すると、DUTがミックスド信号発生器からアナログ信号を受け取ると同時に、DUTのデジタル部分を同期させることができます。また、DUTの出力側にあるアクイジション計測器にマーカでトリガをかけることもできます。マーカ出力は、一般的にはメインの波形メモリから独立したメモリからサンプリング出力されます。

パラレル・デジタル出力は、ソースのメイン・アナログ出力と同じメモリからデジタル・データを出力します(図30を参照)。特定の波形サンプル値がアナログ出力に存在する場合、それに相当するデジタル値がパラレル・デジタル出力にも存在します。このデジタル情報は、D/Aコンバータをテストするときに比較データとして使用できます。あるいは、デジタル出力をアナログ出力と独立してプログラムすることもできます。

フィルタリング

基本波形を定義したならば、フィルタリングやシーケンスなどにより、基本波形を変更または拡張できます。

フィルタリングを使用すると、選択した帯域の周波数成分を信号から除去できます。たとえば、A/Dコンバータ(ADC)をテストする際、信号発生器から供給するアナログ入力信号に、コンバータのクロック周波数の1/2以上の周波数成分がないことを確認する必要があります。こうすることにより、DUT出力での不必要なエイリアシング歪みを防止でき、テスト結果の信頼性を高められます。エイリアシングとは、折り返し歪みが観測する周波数レンジに混入することです。DUTからエイリアス信号が出ている場合、意味のある測定結果は得られません。

こうした歪みを排除する信頼できる方法の1つとして、急勾配のローパス・フィルタを波形に適用し、指定ポイントより低い周波数を通過させ、カットオフ周波数より高い周波数成分を大幅に減衰させることが挙げられます。フィルタは、方形波や三角波などの波形の形状を変えるという目的で使用することもできます。このようにして、既存の波形を変更するほうが、新しい波形を作成するよりも簡単なことがあります。以前はこのような結果を実現するために、信号ジェネレータと外部フィルタを使用していました。幸い、現在の高性能信号発生器の多くには、制御可能なフィルタが内蔵されています。

シーケンス機能

DUTの完全な動作テストを行うために、長い波形ファイルを作成する必要が生じることがよくあります。波形の一部が繰り返される場合、波形シーケンス機能によって、面倒な波形プログラミング作業を大幅に減らすことができます。シーケンス機能を使用することにより、信号発生器の波形メモリに膨大な波形サイクルを「仮想的に」ストアできるというわけです。波形シーケンスは、コンピュータの世界と同様のループやジャンプなどの命令を備えています。これらの命令は、波形メモリとは別のシーケンス・メモリに常駐しており、波形メモリの指定セグメントを繰り返すよう指示します。外部イベントやその他の制御メカニズムで分岐するプログラマブル・リピート・カウンタは、動作サイクルの数と発生順序を決定します。シーケンス・コントローラを使用すると、ほとんど無制限の長さの波形を生成できます。

非常に簡単な例を挙げるために、4000ワードのメモリで、メモリの半分(2000ワード)に歪みのないパルスが、残りの半分に歪みのあるパルスがロードされている場合を想定します。メモリ内容の基本的な繰り返ししかできないとなると、信号発生器は停止を命じられるまで、2つのパルスをひたすら繰り返すしかできません。しかし、波形シーケンス機能ですべてが変ります。

たとえば、歪みのあるパルスを511サイクルごとに連続して2回出現させる必要がある場合、歪みのないパルスを511回繰り返した後、歪みのあるパルスにジャンプしてそれを2回繰り返すというシーケンスを定義し、これをループで繰り返し実行すればよいのです。図32にこの概念を示します。

ループの繰り返しは、無制限または指定値に設定したり、外部イベント入力を介して制御できます。すでに説明した、ストアされる波形サイクルの数と時間分解能との間のトレードオフについて考慮すると、シーケンス機能は、個々の波形の分解能を劣化させずに出力することができる柔軟性の高い機能といえます。

ここで、シーケンスにした波形セグメントは、その前の波形セグメントと同じ振幅レベルで継続する必要があることに注意してください。言い換えると、正弦波セグメントの最後のサンプル値が1.2Vであった場合、シーケンス内の次のセグメントの開始値も1.2Vでなければなりません。この値が異なると、DACが急に新しい値に変ろうとしたときに、好ましくないグリッチが発生する可能性があります。

この例は非常に基本的なものですが、不規則なパターンによって生ずるエラーを検出するための必要な機能を示しています。一例として、通信回路のシンボル間干渉があります。シンボル間干渉は、あるサイクルの信号のステートが後続の信号に影響を及ぼすという現象です。これによる歪みがはなはだしいと、信号の値が変わってしまうことさえあります。波形シーケンスを使用すると、数日または数週間にもわたる長期のストレス・テストを実行できます。

統合エディタ

形状は維持しながらも、先に進むにつれて振幅が変化するセグメントが必要だとします。この場合、すぐに思いつくのが、波形を再計算するか、オフラインの波形エディタを使用して波形を再描画するという方法です。たしかにそれでも振幅の変化を再現することはできます。しかし、このようなアプローチでは時間がかかりすぎます。より良い方法は、波形メモリの時間と振幅の両方を修正できる統合編集ツールを使用することです。

現在のミックスド信号発生器には、波形作成作業を簡略化できる、次のような編集ツールが用意されています。

・グラフィック・エディタ – 波形を作成し、その形状をグラフィックで確認することができます。データ・ポイントはコンパイルされ、波形メモリにストアされます。

・シーケンス・エディタ – コンピュータと同様のプログラミング制御構造(ジャンプ、ループなど)を使用して、保存されている波形の発生順序をシーケンスという形で定義することができます。

データのインポート機能

データ・インポート機能を使用すると、外部の信号発生器で作成された波形ファイルを利用して信号を生成することができます。

たとえば、最新のデジタル・ストレージ・オシロスコープで取り込んだ波形は、ミックスド信号発生器に簡単に転送できます。これにより、1台の「理想的」なデバイスから取り込んだ信号を基準として使用し、そのデバイスの量産品を検査することができます。インポートした波形は、メモリにストアされている波形と同様に、編集ツールを使用して操作することができます。

また、シミュレータや他のEDAソフトウェアで作成した波形も取り込むことができます。EDAデータを取り込み、ストアして、修正を加えることができるため、初期の設計プロトタイプの開発を早めることができます。

ミックスド信号発生器による波形作成の手順

現在のミックスド信号発生器、特にAWGには、波形を生成、編集するための機能、ツールが充実しています。また、特定のアプリケーションにそのまま使用できる波形が用意されている信号発生器もあります。図35に、AWGを使用して信号を生成する手順(ステップ)を示します。

一度作成した波形ファイルは、消さずに保存しておくことができます。波形(または波形のセグメント)は、当初の目的とした作業が完了した後で、別の使い道が出てくる可能性があります。そこで、AWGには波形ファイルとシーケンスをいつまでも保存しておくことのできるローカル・ハード・ディスクが装備されています。最初のステップでは、標準の波形関数で波形を生成するか、他の計測器またはシミュレーション・ソフトウェアから波形をインポートします。

波形の編集(または作成)のステップでは、用意されているユーザ・フレンドリなエディタが役に立ちます。波形エディタでは、基本となる「生」の波形セグメントに対して、数学演算やカット・アンド・ペーストなどのさまざまな方法で修正を加えることができます。

パターン・エディタは、デジタル・データ波形の修正に最適です。AWGのパターン・エディタでは、特定のビットだけを対象にタイミングや振幅のパラメータを変更することができます。本来、デジタル処理を意図しているはずのデジタル・ジェネレータでも、ここまではできません。

サイン関数など簡単な関数波形は内蔵のエディタで生成できます。また、カット・アンド・ペースト編集により、複雑な波形の作成を簡略化できます。

AWGをセットアップする最後のステップは、生成した波形データを波形メモリにロードすることです。「ロード」操作(実際にはカット&ペースト操作)により、波形がAWGの波形メモリに読みこまれ、ここで多重化され、DACを通してアナログ形式で出力されます。

AWGから波形を出力するには、基本的なステップがあります。前述したように、シーケンス・エディタを使えば、波形ファイルを連結して一つのシーケンスにし、ほぼ無制限の長さとある程度の複雑さを持つ単一のストリームを出力できます。

ArbExpressによる波形作成

ArbExpress などのソフトウェア・パッケージを使用すると、波形のインポート、作成、編集が簡単になります。ArbExpressは、AWGおよびAFG用の波形作成および編集ツールです。このMicrosoftWindows(PC)ベースのアプリケーションを使用すると、当社オシロスコープから波形を取り込むことや、標準の波形ライブラリから波形を作成することができます。

スコープ・アクイジション・ウィザードを使用すると、オシロスコープとの接続が簡単に行え、使用可能なチャンネルとメモリ位置から、データ・ソースを簡単に選択できます。波形は、全体をインポートすることもできれば、カーソルで抽出したセグメントのみをインポートすることもできできます。波形は、使用する信号ジェネレータの時間分解能に一致させるように、リサンプリングすることも可能です。

ArbExpressでは、ポイント描画ツールまたは数値データの表入力を通して、標準波形を基にした波形を自由に定義することもできます。波形を作成したあと、カーソルと編集ツールを使用して、簡単に異常を加えることができます。セグメントまたは完全な波形を時間軸または振幅軸でシフトすることも可能です。この機能により、簡単に実環境の信号を生成できます。

AWGアプリケーションの傾向

プリエンファシス/ディエンファシス信号の生成

高速化の一途をたどる伝送速度に対応し、損失の大きい伝送路の周波数特性を補正するため、プリエンファシス/ディエンファシス技術が広く使われるようになってきています。PCIExpress などのシリアル・データ規格においても、コンプライアンス・テストの項目にプリエンファシス/ディエンファシスのテストが含まれています。プリエンファシスの基本原理は、同じ値のビットがいくつか連続する場合、先頭ビットの電圧を後続ビットよりも大きくする(強調する)というものです。これにより、伝送ラインの周波数特性が補正され、受信側における信号忠実度が高くなります。高い品質で直接出力することができ、複数のチャンネルやパワー・コンバイナを介した面倒な信号生成は、もう必要ありません。

マルチレベルの信号生成

シリアル・インタフェースに対する要件も厳しくなる一方です。より高速なデータ・レートが求められ、ケーブルや回路の性能はもはや理論的な限界近くまできています。転送速度を上げずにデータ・レートを上げる技術の1つにマルチレベル信号があります。これは2つのレベル(値)を持つ標準のバイナリ信号とは異なり、3つ以上のレベル(値)を持つ信号のことです。複数レベルの不連続な振幅を持つ信号、という言い方もできます。一般には、パルス振幅変調(PAM)と言います。たとえば、4PAM信号、すなわち4つの異なる振幅を持つ信号であれば、同じ転送速度でもデータ・レートは4倍になります(図38を参照)。

広帯域RF信号の生成

RF信号の領域では(ワイヤレス・マウスから衛星画像受信に至るまで)、十分なサンプル・レートと分解能を持ち、どんなに複雑なRF信号でも検証することのできるテスト機器が必要です。最新のデジタルRF技術を採用したレーダやUWBなどの無線分野では、既存のテスト機器では対応しきれないケースもあります。AWGは、キャリア周波数5GHzまで、周波数帯域5.8GHzまでのRF信号を直接生成し、D/Aコンバータ経由で出力することができます。IF信号またはRF信号を直接生成できるため、I/Q変調によって波形品質が低下する心配はありません。また、I/Q変調を使った従来の信号生成とは異なり、面倒な調整の必要もありません(図39を参照)。

無線I/QおよびIF信号の生成

デジタルRF技術により、無線ネットワークの容量、性能は著しく向上しています。最新のデジタル変調、広帯域変調信号を発生できる十分な性能を持つ当社の任意波形ジェネレータは、デジタルRF技術の開発、製品の設計・検証をサポートします。

最新のAWGは、14ビットの垂直分解能で十分なダイナミック・レンジとSFDRを実現し、狭帯域のIQアプリケーションから広帯域のIFアプリケーションまで幅広いニーズに対応することができます。

AWGはアナログIQ/IF信号だけでなく、デジタル・データIQ/IFを出力することもできます。WLAN/WiMaxで利用される複数のアンテナを用いた空間多重によるMIMO(MultipleInputMultipleOutput)システムは、信頼性の高い、高速データ・レート通信のための最新技術です。最新のAWGは最大で4つのアナログ出力チャンネルを持ち(2台のAWGで8チャンネル)、同期したMIMO信号を出力することができます(図40を参照)。

ロジック信号発生器の種類

ロジック信号発生器は、デジタル・テストに適した専用のツールであり、特定の情報内容とタイミング性能を持つ、長く連続的なバイナリ・データ・ストリームを必要とするデジタル・デバイスを駆動するために必要な信号を生成します。ロジック信号発生器には、パルス・パターン・ジェネレータとデータ・タイミング・ジェネレータの2種類があります。

パルス・パターン・ジェネレータ(PPG)

パルス・パターン・ジェネレータは、少ない出力チャンネルから、通常は非常に高い周波数の方形波またはパルスを生成します。ストリームが変調されていない限り、通常パルスには情報内容(データ)は入りません。しかし、高機能パルス・ジェネレータは、高い周波数と高速の立上り時間を備えているため、高速デジタル機器をテストする理想的なツールです。

データ・タイミング・ジェネレータ(DTG)

AWGおよびAFGがアナログの形状と性能を持つ波形を生成することを主な目的としているのに対して、データ・タイミング・ジェネレータは、大量のバイナリ信号を生成することを目的としています。データ・タイミング・ジェネレータは、パターン・ジェネレータあるいはデータ・ジェネレータとも呼ばれ、コンピュータ・バス、マイクロプロセッサなど、デジタル・コンポーネントのテストに必要な、1と0のストリームを生成します。

設計部門では、データ・タイミング・ジェネレータは、デジタル・デバイスをテストするために不可欠な信号発生器です。この計測器は広い意味で、新しく設計した回路の機能テストやデバッグ、そして以前に設計した回路のエラー解析に役立ちます。タイミングと振幅のマージン評価をサポートする便利なツールでもあります。

製品開発サイクルの初期段階では、未完成のシステム・コンポーネントの代わりにDTGを使用することもできます。たとえば、信号を供給するプロセッサがまだ出来上がっていない場合、DTGをプログラミングして新開発のバス回路に割り込みとデータを送信するといった使い方が考えられます。また、DTGは、メモリ・バスにアドレスを供給したり、正弦波に相当するデジタル波形をD/Aコンバータに供給するという目的にも使用できます。

DTGには、並外れて長いパターンや時折発生するエラーをデータ・ストリームに埋め込む能力があるため、軍や航空宇宙の標準規格に対する適合性を保証する長期間の信頼性テストにも使用できます。さらに、DUTからの外部イベントで制御できるシーケンス機能を持っているため、要求の厳しい性能評価の用途においても、より高い柔軟性を実現しています。

DTGは、ASICやFPGAなどの半導体デバイス、あるいはハード・ディスク・ドライブの書込み回路やDVDなどの回転メディアのテストにも適しています。同様に、CCDイメージ・センサやLCD表示ドライバ/コントローラのテストにも役立ちます。DTGは、DUTを駆動するのに複雑なデジタル・ビット・ストリームを発生することで、効果的なソリューションを提供します。

DTGの回路には、AWGやAFGと同様に、アドレス・ジェネレータ、波形(またはパターン)メモリ、シフト・レジスタなどが含まれていますが、D/Aコンバータは含まれていません。デジタル・テストでは常にレベルが変化するアナログ波形は必要ないので、パターン・ジェネレータではD/Aコンバータは必要ないのです。DTGにはアナログ出力回路がありますが、この回路は、パターン全体に適用される電圧とエッジのパラメータを設定することを目的としたものです。ほとんどのDTGには、パターン用の論理1と0の電圧値を設定する機能が用意されています。

DTGには、ジッタとタイミング・テストをサポートするために設計された、いくつかのデジタル機能が備わっています。特別な遅延回路が、エッジ位置の微調整を実現しています。

遅延回路は、エッジ位置をピコ秒のオーダで細かく移動することができます。最新のDTGでは、前面パネルの専用ノブを装備しているものがあります。これにより、すべてのエッジまたは選択されたエッジを5nsあるいはそれ以上の範囲で、0.2psステップで移動することができます。これらの微細なタイミング変化は、公称の中心点付近でパルス・エッジを不規則に移動させることにより、典型的なジッタ現象をモデル化できます。クロックに対するエッジ・タイミングを変更し、その効果を観察することにより、ジッタ許容範囲のテストを行うことができます。

現在の最新鋭のDTGでは、このジッタをパターン全体に適用できるのはもちろん、特定のエッジをピンポイントで指定できるマスキング機能を使用して、特定のパルスだけに適用することもできます。図42に示す波形は、パターン・ジェネレータでジッタ効果を付加して出力した信号を、デジタル・フォスファ・オシロスコープ(DPO)で取り込んだものです。

最近のDTGにはこれ以外にも、重要なジッタ・テストに柔軟に対応できる機能も備わっています。たとえば、外部アナログ変調信号でエッジ移動量(ピコ秒)とエッジのスルー・レートの両方を制御できる機種もあります。これだけ多くのジッタ変数を自由に変更できるので、DUTに広範なストレスを加えることができます。

セットアップ/ホールド時間違反などのタイミング問題のテストでは、遅延回路もまた同様に重要な役割を果たします。ほとんどのクロック制御デバイスでは、データ信号はクロック・パルスの出現前に数ナノ秒(セットアップ時間)存在し、クロック・エッジの後に数ナノ秒間(ホールド時間)有効である必要があります。遅延回路は、こうした一連の条件を容易に実現できます。テストでは、クロック・エッジを一定に維持しながら、入力データ信号のクロック・エッジとトレーリング・エッジを、それぞれ一度に数分の1ナノ秒移動します。DUTから出力された信号を、オシロスコープあるいはロジック・アナライザで取り込みます。DUTが入力状態と一致した有効なデータを送出し始めたときの、データのリーディング・エッジの位置がセットアップ時間です。このアプローチは、予測不可能なDUT出力のメタステーブル条件を検出するためにも使用できます。

DTGの機能には、フィルタリング、変調などの信号処理操作は含まれていませんが、出力信号を操作するツールがいくつか用意されています。デジタル設計上の問題は、ジッタやタイミング違反など純粋なデジタル上の問題に限定されていないため、これらの機能が必要となります。設計ミスの中には、異常な電圧レベルや立上り時間の遅いエッジなど、アナログ現象の結果によるものもあります。パターン・ジェネレータは、この両方をシミュレートできる必要があります。

駆動信号の電圧変動による影響をテストすることは、主要なストレス・テスト項目です。デジタルDUTをさまざまな電圧レベル、特にデバイスの論理しきい値より低いレベルで動作テストすることにより、デバイスの性能と信頼性を全体的に予測できます。間欠的(かつ追跡が困難な)エラーが発生するDUTは、電圧が下がるとまず間違いなく「ハード」エラーを起こします。

図43は、いくつかの離散した論理レベルを生成するように、DTGをプログラムした場合の効果を示します。ここには、いくつかの命令の実行結果を累積したものが表示されていますが、実際には命令は、単一の電圧レベルをパターン全体に適用します。

エッジのトランジション時間や立上り時間も、デジタル設計で生ずる問題の別の原因になることがよくあります。エッジ・トランジションが遅いパルスは、時間内に次のデバイスをトリガして、正確にデータの送受を行うことができません。遅いエッジは競合条件だけでなく、間欠的なエラーを引き起こす、もう一つの原因になることがよく知られています。累積した多数の設計要因、特に分布容量やインダクタンスは、送信側から受信側に移動する間にパルスの立上り時間を劣化させる可能性があります。このため、エンジニアは、その回路が一定範囲の立上り時間を確実に保持できるように工夫します。電圧変動と同様に、パルス・エッジ・レートの低速化も、ストレスとマージン・テストの中に含まれています。DTGの出力にトランジェント・タイム・コンバータを接続することにより、エッジ・レートを変化させることができます。図44に、プログラマブル・スルー・レート機能の効果を示します。

DTGはデジタル測定アプリケーションに特化しており、高機能シーケンサ、複数出力、各種のパターン・データ・ソース、独特の表示など、AWGやAFGには見られない独自の機能が充実しています。

DTGには、デジタル・デバイスのテストに必要な数百万ものパターン・ワード(ベクトル)をストアできるほど大きな容量のメモリは内蔵されていません。そのため、パターン・ジェネレータには、データとパターン生成に不可欠な、高性能のシーケンサ機能が搭載されています。DTGは非常に長い複雑なパターンを送出し、外部イベント(パターン・ジェネレータのシーケンサ内で分岐実行を促すDUT出力条件など)に応答する必要があります。DTGのパターン・メモリ容量は最大でも640万ビット前後といったところですが、AWGと同様に、短いパターン・セグメントをループすることにより、非常に長いデータ・ストリームを生成することができます。また、外部イベントやトリガを待ち、一連のリピート・カウントや条件ジャンプを実行できます。さらに、DTGのシーケンサには、多重レベルのループ・ネスティングや分岐条件が用意されています。シーケンサは通常のプログラミング手法で制御できるツールで、考えられるほとんどすべてのデジタル・デバイスのアドレス、データ、クロック、そしてコントロールを生成します。DTGのシーケンサには、パターン長を無制限に拡張する独自の機能が備わっています。図45に、少数の短い命令とパターン・セグメントで、何百万ラインに渡るパターン・データを生成するフローを示します。

DTGの多チャンネル出力もまた、デジタル設計用途には適切です。AWGやAFGには2または4チャンネルの出力しかありませんが、パターン・ジェネレータには、8、32、さらには百数十チャンネルの出力があり、多チャンネルを必要とする一般的なデジタル・デバイスのデータやアドレス入力をサポートできます。複雑なデジタル・パターンの手入力は途方もなく単調でエラーを起こしやすいために、最近のDTGはロジック・アナライザやオシロスコープ、シミュレータ、さらにはスプレッドシートからもデータを入力できる機能を備えています。さらに、デジタル・データは、通常、設計プロセスのさまざまなシミュレーションや検証ステップからも入力することができます。

DTGの画面は、AWGのように信号振幅と時間の関係を詳細に表示するよりも、同時に多チャンネルのパターン・データを詳細に表示する必要があります。マーカ機能やスクロール機能など、短時間で目的のデータを探し出して表示する機能も求められます。図46に、マルチチャンネル・パターン・ジェネレータの表示例を示します。

最後に、DTGは電圧精度や立上り時間性能、エッジ・ポジションなどを含む厳しいパルス・エッジ特性を必要とするテストによく使用されます。残念ながら、高品質の信号を計測器の前面パネルにあるコネクタから供給するだけでは不十分です。計測器から1m以上離れたテスト・フィクスチュアに、ケーブルやコネクタを経由して信号を伝送する必要があることもよくあります。このような条件でケーブルやコネクタを経由した場合、信号タイミングやエッジ細部は著しく劣化します。最近のパターン・ジェネレータでは、外部信号インタフェースを使用してこの問題を解決しています。このインタフェースは、信号をバッファして、計測器の性能を保ったまま信号をDUTまで届けます。図47に、信号インタフェースを装備したDG2020A型パターン・ジェネレータを示します。このインタフェースは、ケーブル・キャパシタンスによる立上り時間の劣化を最小限に抑え、ローカル電流を十分に供給して、「ロー・ダウン」なしでDUT入力を駆動します。

ロジック信号発生器の使い方

図48に、高機能ロジック信号発生器である当社DTG5334型データ・タイミング・ジェネレータを示します。

ロジック信号発生器は、ミックスド信号発生器のように、メニュー・ベースの操作の他に、前面パネルにダイレクト・アクセスのボタンがあり、タイミングやレベルなどの共通の設定をすばやく行うことができます。最新のロジック信号発生器は、デジタルのニーズに対応した専用の使いやすい機能と、類似のAWGと明らかに異なる拡張パターン開発ツールを備えています。

図48に示すタイミング・コントロール画面は、Windowsベースのアーキテクチャを使用しています。その他の機種では、独自の各種インタフェースを使用しています。Windows環境には、ネットワークや周辺機器、USBなどのI/Oバスと簡単に接続できる利点があります。DTGユーザ・インタフェースは、パターン・シーケンス作成、レベル設定、一般的なデータ入力を行うための表示画面です。ロジック信号発生器には、大画面の外部モニタに接続できるVGA出力が用意されているものもあります。

また多くの機種では、頻繁に使用する必要のある機能(データ値、タイミング、振幅値の設定など)については、前面パネルの専用のショートカット・ボタンでアクセスできるようになっています。このボタンを使用すると、わずらわしいメニュー操作なしで値を設定でき、時間を節約できます。

Run/StopSequenceボタンを押すと、ストアされたシーケンスの動作を開始できます。さらに条件が整えば、メイン出力コネクタからパターン・データの送出が開始されます。通常、パターン・データ出力開始の条件は、ManualTriggerボタンまたはExternalTrigger入力によってトリガが発生し、しかもOutputOn/Offボタンが有効になっていることです。OutputOn/Offボタンは、テスト・プログラムを開発時に出力信号を遮断して、接続されたDUTにデータが送信されないようにするために使用します。

Menu/Navigationキー、スクロール・ノブ数値キーパッドは、プログラム開発に使用します。Menu/Navigationキーはメニュー操作に、スクロール・ノブとキーパッドはタイミング値やバイナリ・データなどの数値データ入力に使用します。

モジュラ形式は、最近のロジック・ファミリとバス・アーキテクチャの多様な電気的要件に対応できる有効なソリューションです。モジュールは特定のロジック・ファミリに応じてインピーダンス、電流、電圧などのパラメータを最適化でき、所定の範囲で最高の精度を確保できます。さらに、モジュラ形式は不要のモジュールを省いてコストを節約できます。計測器本体には、最小で4チャンネル、最大で32チャンネルの出力を実装できます。

前面パネル以外に、後部パネルにも重要な同期出力があり、業界標準の10MHzクロックとシステム・クロック信号(ロジック信号発生器の現在の動作周波数)、メイン・クロックの整数倍で信号を送出するフェイズ・ロック・ループ出力が含まれています。これらすべての信号を使用して、アクイジション計測器、DUT自身、さらには他の信号発生器とも同期できます。前面パネルにあるSyncOutputも、日常的な同期出力発生に使用できます。

デジタル信号発生器に関する用語と性能

デジタル信号発生器の性能パラメータは、その多くがアナログ信号発生器のAWGやAFGと共通しています。

データ・レート

データ・レートは、デジタル信号発生器がバイナリ情報のフル・サイクルを出力できるレートを示します。サイクル内の実際のデータ・ビットによっては、ステートが変更される場合も、変更されない場合もあります。サイクルの境界間の時間によって、メガビット/秒またはギガビット/秒のデータ・レートが決まります。

パターン長

AWGのメモリ容量と同様に、パターン長によって、パターン生成のためにストアできるデータの最大量が決まります。メモリ容量が大きいほど、より多くのパターンをストアできます。デジタル信号発生器は、シーケンス機能でパターン・ワードを組み合わせてほぼ無制限のデータ・パターンを生成できます。

垂直軸(振幅)分解能

垂直軸(振幅)分解能とは、信号発生器内でプログラミングして電圧を可変できる最小ステップのことです。デジタル・コンテキストでは、この数値は対象のデバイス・ファミリに応じてセットアップするロジック・レベルに関係します。公称では「固定」になっていますが、このレベルは一定範囲内で修正して、電圧低下テストのようなストレス・テストを行うことができます。垂直軸分解能によって、この電圧変更の最小ステップが決まります。

水平軸(タイミング)分解能

水平軸(タイミング)分解能とは、エッジ、サイクル時間、パルス幅などを変更できる最小時間間隔のことです。

出力チャンネル

デジタル・パターン・ソースは、アナログ信号発生器とは異なり、一般的に多くのDUT入力を一度に駆動します。単一のデジタル・コンポーネントまたはバスでは、信号発生器から8または16チャンネル以上の出力が必要になります。計測器には、これらの信号を1つのグループにまとめ、多くの信号を1つのものとして操作できるチャンネル・グルーピング機能が必要です。一般的な例としては、アドレス信号に対応する全てのチャンネルをあるグループに、データ信号のすべてのチャンネルを別のグループに、そして書き込み許可信号をさらに別のグループに割り当てることがあげられます。このフォーマットを使用すると、ストレス・テストの場合と同様に、すべてのアドレス・ラインの電圧を一度に下げることができます。

シーケンス機能

シーケンス機能は、デジタル・パターン生成の基本となる機能です。ジャンプやループなどのコンピュータと同様の命令を使用して、別々に定義されている多くのパターン・データ・ブロックを自在に組み合わせることができます。ブロックとは、長さを指定して(512サイクルなど)繰り返し使用することのできるセグメントのことです。これにより、デジタル・デバイスの完全な動作テストに必要な膨大な量のデジタル・パターンを作成できます。

統合エディタ

デジタル・パターンの編集には、編集ツールが必要です。高性能デジタル信号発生器の一部には、編集機能(エディタ)が組み込まれていて、外部のコンピュータとエディタを必要としないものもあります。このエディタでは、画面上で波形を確認しながら、クロックとデータ・ストリームの両方をセットアップすることができます。一方、スプレッドシート形式のテーブル・エディタでは、カット・アンド・ペースト機能でパターンを編集できます。

データのインポート機能

現在のデジタル・パターン・ソースは、EDAシステムや他の計測器からデジタル・パターンをインポートできます。これは、特にプロトタイプ検証用のパターンを開発する必要性をなくし、大幅に時間を節約できるため、設計検証の有益な補助手段となります。

ロジック信号発生器による波形作成の手順

デジタル・パターンとして使用する「波形」を生成するには、アナログ分野とは異なる手順が必要です。高性能のロジック信号発生器の場合、このプロセスは同様な信号のグループ定義、クロックおよびデータ・パターンの適用、およびロジック・レベルの設定からなります。

図49に、DTG5000シリーズの電圧編集画面を示します。

図50には、ロジック信号発生器によるデジタル・パターン信号の作成手順をフロー・チャート形式で示します。

デジタル・デバイスのニーズに合わせるために、ロジック信号発生器では、デバイスの入力ピンと適合するデータ・チャンネルをグループ化することができます。この方法により、計測器内部のメモリにストアされている情報を、選択された出力チャンネルに配信できます。ほとんどのデジタルDUTには、クロック、アドレス、およびデータ・ピンの3グループがあり、これらをロジック信号発生器のチャンネル・グループにマッピングできます。このアーキテクチャにより、ピン・グループ全体の電圧や遅延などの値を、1つずつではなく、一度に変更できるようになります。

次のステップは、シーケンスを構成する「パターン・ブロック」の作成です。ブロックとは、長さを指定した(1024ビットなどの)パターン・セグメントのことです。通常のアプローチは、テスト・シーケンスの進行に合わせて、各種の組合せができる一群のブロックを作成することです。

適切な数のブロックを定義したら、ブロックをデータで満たす必要があります。一部のロジック信号発生器には、「WalkingOnes」、「Checkboard」、「GreyCode」など、標準的なフォーマットで定義されたパターンのライブラリが用意されています。これらの各種パターンを含むブロックを交互に入れ替えると、膨大な数のデジタル・パターンでDUTにストレスをかけることができます。内蔵のシーケンス・エディタがこの作業の役に立ちます。ブロックの順番、繰り返し回数、ジャンプやGoToステートメントなどの条件分岐の命令をテーブルに埋めるだけで、簡単にシーケンスをプログラムできます。

デジタル・パターン作成の最後のステップは、DUTに適用するロジック電圧とタイミング条件の指定です。現在、世界には多くの異なるロジック・デバイス・ファミリがあり、それに伴いドライブ・レベルにも多くの異なる要件があります。幸い、最新のデジタル信号発生器には、これらのニーズに合わせたプリセットが用意されています。もちろん、ユーザが設定をプログラミングすることもできます。その他の変数として、終端インピーダンスと終端した電圧、データ・フォーマット(RZ、NRZなど)、クロック周波数、エッジ遅延などがあります。これらのデータについても、シンプルなテーブルで入力することができます。

まとめ|信号発生器(シグナルジェネレータ)

多くのエンジニアは、トラブルシューティングや設計の検証を単なる「測定」作業ととらえ、オシロスコープやロジック・アナライザを用意しさえすればいいと条件反射的に考える傾向にあります。しかし、これらのアクイジション計測器だけでは不十分です。DUTを駆動するための機器、つまり信号発生器も必要です。

アクイジション計測器と信号発生器を組み合わせることで初めて、DUTを複雑な実際の信号で駆動して出力結果を取り込むことのできる完全なソリューションになります。オシロスコープは、業界標準のアクイジション計測器です。しかし、信号発生器がなければ、デバイスへの入力信号を制御することができないばかりか、デバイスからの出力信号も無意味なものになってしまいます。

また、信号発生器がなければ、マージン・テストと性能評価も行えません。オシロスコープやロジック・アナライザに信号発生器を組み合わせることで、信号に意図的なストレスを与えてその結果をオシロスコープで結果を測定することや、デジタル・エラー発生時のデータをロジック・アナライザで取り込んで設計の耐久性を探ることができます。ディスク・ドライブ設計からテレコム機器のコンプライアンス・テストに至るまでの用途では、信号発生器とアクイジション計測器が連動することで、完全な測定ソリューションとして機能します。

信号発生器(シグナルジェネレータ)のラインアップ 

センサ信号の再生からRF信号、高速シリアル・データ信号の生成まで、広範なアプリケーションをカバーする、テクトロニクスの最新の信号発生器をご紹介します。

任意波形/ファンクション・ジェネレータ

 

標準波形、任意波形機能、信号障害オプションにより、1台で幅広いアプリケーションのニーズをサポート

AWG5200シリーズ

 

任意波形発生器AWG5200シリーズはチャンネルあたりのコストを抑えながら、優れた信号品質、スケーラビリティ、コードの後方互換性を実現します。マルチユニット同期により、最大32チャネルまで拡張可能です。AWG5200は、高度な研究、電子試験、レーダ、電子戦システムの設計と試験に最適です。

  • 出力周波数:最高4GHz
  • サンプル・レート:298S/s - 5GS/s
  • メモリ長:2Gサンプル
  • チャンネル: 最大8
  • 垂直分解能:16ビット
  • SFDR(スプリアス・フリー・ダイナミック・レンジ):-70dBc

 

AWG70000Bシリーズ任意波形ジェネレータ

AWG70000Bシリーズ任意波形ジェネレータは、理想的な信号も、歪の多い"実世界"の信号も簡単に生成できる、業界最高の信号スティミュラス・ソリューションを提供します。複雑なコンポーネント、システム、実験の設計、テスト、運用に最適なAWG70000Bシリーズは、サンプル・レート、信号忠実度、波形メモリ長において新基準を確立します。

  • 出力周波数:最高20GHz
  • サンプル・レート:50GS/s
  • メモリ長:2Gサンプル/チャンネル、32Gサンプル(オプション)
  • 分解能:10ビット
  • SFDR(スプリアス・フリー・ダイナミック・レンジ):-80dBc