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オシロスコープ入門|誤差の原因と考察


本記事では、波形を正しく見せるために外せないポイントを、Q&A形式でわかりやすく解説します。これらのポイントを外せば、オシロスコープは正しい波形を表示できません。誤差が大きくなります。

サンプリング・オシロスコープ と呼ばれるオシロスコープは特殊な波形取込み手法により、100GHzもの超々広帯域性能を持ちますし、通常のオシロスコープでもDSP(デジタル信号処理)を用いて、周波数特性の補正をするタイプは1GHzを優に超え20GHzまでもの超広帯域性能を持ちます。これらのオシロスコープはここでは論じません。本記事では約1GHzくらいの周波数帯域を持つオシロスコープに限ってお話しします。なお、特別の断りがない場合、「オシロスコープ」は「デジタル・オシロスコープ」を指すものとします。

周波数帯域に関する誤差の原因と考察

まずは、周波数帯域に関する誤差の原因と考察から始めていきます。

ある周波数のサイン波を、同じ周波数帯域のオシロスコープで測れる?

オシロスコープの垂直軸に関する最も大きなスペックは「周波数帯域」です。カタログばかりか、実機のフロント・パネル上にもしっかりと明示されています。100MHzとか1GHzとかオシロスコープの性能が示されています。さて、問題です。

問題: 最高周波数帯域100MHzをうたうオシロスコープで繰返し周波数100MHz、振幅1Vのサイン波を観測すると、

  • ①振幅は1Vより大きく見える
  • ②振幅はちょうど1Vに見える
  • ③振幅は1Vより小さく見える

答えは③です。振幅は1Vより小さく見えます。理由は周波数帯域の定義の仕方にあります。エネルギーが半分、振幅が70.7%に低下した周波数をもって周波数帯域と定義します。つまり、周波数帯域と定められた周波数においては振幅が減少しているのです。よって、周波数帯域が100MHzぴったりのオシロスコープで観測すると、1Vの100MHzサイン波は0.707Vにしか見えません。(図1)

図1 周波数帯域の定義の仕方を示したもの

さて、また問題です。

問題: 最高周波数帯域100MHzをスペックでうたうオシロスコープで繰返し周波数100MHzのサイン波を観測すると、

  • ①振幅は70.7%より大きく見える
  • ②振幅はちょうど70.7%に見える
  • ③振幅は70.7%より小さく見える

答えは①です。サイン波の振幅は70.7%より大きく見えます。なぜならオシロスコープのスペックにおいて、周波数帯域は○○Hz「以上」と規定されており、100MHzのオシロスコープは実際100MHz以上あるからです。つまり、周波数帯域は余裕を持たせてスペックするので、振幅は70.7%より小さく見えることはありませんし、ちょうどピッタリでもなく、70.7%より少し大きめに見えます。それでも約30%もの大きな誤差となります。

振幅による誤差を小さくする方法

もっと小さな誤差で済ませるには、もっと広い周波数帯域を持つオシロスコープを使います。約1GHzくらいまでのオシロスコープの高域減衰特性はガウス曲線に近似していますので、この曲線をなぞると、もっと誤差の小さな結果を得るための周波数帯域を推測することができます。

100MHzのオシロスコープの例で見ると、30MHzくらいまでの周波数の測定にとどめれば、約3%の誤差で測定できることになります。これを「サイン波の3倍の法則」といいます。言い換えると、3%の誤差にするには3倍広帯域のオシロスコープを使用すればよいことが分かります。(図2)

図2 ガウス曲線

パルス波形の形はどう見える?

問題です。

問題: 最高周波数帯域20MHzをうたうオシロスコープで繰り返し周波数10MHzのパルス波を観測すると、

  • ①波形はきれいなパルス波に見える
  • ②波形は丸まった台形波に見える
  • ③波形はきれいなサイン波に見える

答えは②です。波形は台形波に見えます。パルス波の形状は、3次5次7次…と無数の奇数高次の高調波を含むことにより、形成されています。(図3)

図3 各パルス波形の形

ところが、高次の50MH(z5次)、70MH(z7次)、…は周波数帯域20MHzのオシロスコープでは減衰が激しく、パルス形状の形成が再現できません。結果、オシロスコープが表示する波形は、パルス波にはとても見えません。せいぜい3次高調波(30MHz)がわずかに通過し、波形を辛うじて台形にとどめるのが精いっぱいです。

図4では、250MHzのオシロスコープで取り込んだ波形を細い黒色で、20MHz帯域制限機能により、20MHzのオシロスコープとして取り込んだ波形は太い青色で表現されています。青色の波形は立ち上がり/立ち下がり部が斜めに表現され角も丸まっています。