オシロスコープ選びに重要な10項目
オシロスコープは、回路のトラブルシュートまたは信号品質のチェックのために信号を観測する“窓”として使用されます。一般的に、周波数帯域は50MHzから200MHzであり、ほとんどの実験室、研究室、サービス・センター、製造現場で見ることができます。本記事では、仕事に適したオシロスコープを選択する際に最も重要な10の項目について説明します。
- 周波数帯域
- サンプル・レート
- チャンネル数
- プローブ
- トリガ
- レコード長
- 自動測定
- 使いやすさ
- 接続性
- シリアル・バスのデコード
周波数帯域
周波数帯域は、オシロスコープがアナログ信号を測定する能力を示します。特に、正確に測定できる最高周波数を示します。周波数帯域は、価格を決定する要素でもあります。
オシロスコープと周波数帯域
- 例えば、周波数帯域100MHzのオシロスコープは、通常、100MHzの信号が30%未満の減衰で測定できることを保証しています。このオシロスコープで振幅確度2%より良い確度で測定できる入力信号は20MHz未満です。
- デジタル信号では、立上り時間、立下り時間の測定が重要になります。測定できる最も高速な立上り時間は、オシロスコープの周波数帯域、サンプル・レートで決まります。
- プローブとオシロスコープで構成される測定システムで周波数帯域が決まります。低帯域のプローブを使用すると全体としての周波数帯域を低下させてしまうため、オシロスコープに適したプローブを使用する必要があります。
周波数帯域は、正弦波入力信号がその本来の振幅に対して70.7%(-3dBポイント、この例では100MHzのオシロスコープ)のレベルに減衰したポイントにおける周波数と定義されます。
オシロスコープの周波数帯域は、測定する最高周波数の5倍以上
周波数帯域の選択では、“5倍ルール”を使用します。
オシロスコープの周波数帯域が十分にないと、高周波成分の変化を表示できません。波形は歪み、立上りは鈍り、信号の詳細は失われます。
周波数帯域の目安
オシロスコープの周波数帯域は、通常50MHzから200MHzです。より広帯域が必要な場合は上位性能のオシロスコープが用意されており、周波数帯域は350MHzから数GHzまであります。
サンプル・レート
オシロスコープのサンプル・レートはビデオ・カメラのフレーム・レートに似ており、どの程度細部まで取込めるかを示します。
オシロスコープとサンプル・レート
- サンプル・レートはS/s(サンプル数/秒)で表わされ、オシロスコープがどの程度の頻度で信号をサンプリングするかを表します。ここでも“5倍ルール”を推奨しており、回路の最も高い周波数成分の最低5倍のサンプル・レートを使用します。
- ほとんどのベーシック・オシロスコープの最高サンプル・レートは、1~2GS/sです。繰り返しになりますが、ベーシック・オシロスコープの最高周波数帯域は200MHzであるため、オシロスコープの設計エンジニアは最高周波数帯域の5~10倍のオーバーサンプリングで利用できます。
- サンプル・レートが高速であると見落とす情報は少なくなり、テストする信号の細部まで再現できます。ただし、サンプル・レートが高速であるとすぐにメモリが一杯になるため、取込める時間が短くなります。
どの程度正確に再現できるかは、サンプル・レートと補間方法によります。直線補間はサンプル・ポイント間を直線で結びますが、この方法は直線エッジの信号の再現に限定されます。Sin(x)/x補間は、実際のサンプル間を埋めるポイントをサイン関数で求めます。この方法は曲線や不規則な信号形状に適しています。実際には、観測する信号は純粋な方形波パルスではなく、曲線や不規則な信号であることがほとんどです。したがって、ほとんどのアプリケーションではSin(x)/x補間が使用されます。
グリッチの取込み
ナイキストの定理によると、高周波成分を正確に再現し、エイリアシング(アンダーサンプリング)を防ぐためには、最も高い周波数成分の少なくとも2倍の速度でサンプリングする必要があります。しかし、ナイキストは絶対最小であり、正弦波のみに適用され、連続信号を想定しています。グリッチは連続して起きないため、最高周波数成分の2倍のサンプル・レートでは事実上不十分です。
サンプル・レートの目安
ほとんどの入門レベルのオシロスコープの最高サンプル・レートは、1~2GS/sです。200MHz以上の周波数を観測する場合は、より高性能なオシロスコープが必要になることがあります。
チャンネル数
デジタル・オシロスコープは、アナログ・チャンネルをサンプリング、保存、表示します。チャンネル数が多いに越したことはありませんが、チャンネル数が増えると価格に反映されます。
オシロスコープとチャンネル数
- アプリケーションの必要性に応じて2チャンネルまたは4チャンネルを選択します。例えば、2チャンネルあれば、コンポーネントの入力と出力が比較できます。4チャンネルあるとそれ以上の信号が比較でき、さらにそれらのチャンネルの演算処理が可能になります(掛け算することで電力が、引き算することで差動測定が可能になります)。
- ミックスド・シグナル・オシロスコープ(MSO)にはデジタル・チャンネルが追加されており、ハイとローのステートがわかり、バス波形として表示できます。いずれの機種を選ぶにしても、すべてのチャンネルは十分なレンジ、優れた直線性、確度、フラットネス、静電放電に対する耐性を持っている必要があります。
- 機種によっては、チャンネル間でサンプリング・システムを共有しているものもあります。オンにするチャンネル数によっては、サンプル・レートが低下することがあるため、注意が必要です。

チャンネル数と観測できるポイントの数
時間的に相関のとれるアナログ/デジタル・チャネルの数が多いほど、回路で同時に観測できるポイントの数が多くなります。例を挙げると、ワイド・パラレル信号が容易にデコードできます。この例では、2つのアナログ波形、2つのデジタル波形、1つのデコードされたバス波形が表示されています。
RF入力チャンネルを装備したオシロスコープ
最新のミックスド・ドメイン・オシロスコープ(MDO)には、スペクトラム・アナライザ と専用のRF入力が統合されており、周波数ドメインが測定できます。オシロスコープによっては、ファンクション・ジェネレータ を内蔵しているものもあります。絶縁チャンネルを装備しているものもあり、フローティング測定が簡単に行えます。グランド基準のオシロスコープと違い、入力コネクタのシェルはチャンネル間およびグランドから絶縁されています。
プローブ
正確な計測のためには、まずプローブ が大切です。オシロスコープとプローブはシステムとして機能するため、オシロスコープを選択する場合、プローブも慎重に検討する必要があります。
オシロスコープとプローブ
- 測定において、プローブを使用するということはプローブが回路の一部になるということであり、抵抗負荷、容量負荷、誘導負荷となって測定結果に影響を及ぼします。
- この影響を最小限に抑えるため、使用するオシロスコープ用に設計されたプローブを使用します。
- 十分な周波数帯域を備えた受動プローブを選択します。プローブの周波数帯域は、オシロスコープの周波数帯域に合ったものにします。
- 豊富な種類のプローブが用意されており、アプリケーションに合ったプローブが選べます。プローブ購入前に、オシロスコープに適合していることを確認する必要があります。
アプリケーションに合ったプローブ:測定するのは電圧ですか、電流ですか、その両方ですか?信号の周波数は?振幅の大きさは?信号の差分を測定する必要がありますか?何を測定するかによって、必要となるプローブが決まります。
プローブの種類
- 受動プローブ:減衰比10:1の受動プローブでは、測定する回路に抑制されたインピーダンスとキャパシタンスが加わるため、ほとんどのグランド基準の測定に適しています。ほとんどのオシロスコープに付属しており、入力チャンネルごとに1本必要になります。
- 高電圧差動プローブ:差動プローブを使用することで、グランド基準のオシロスコープを使用した、安全、正確なフローティング/差動測定が行えます。どの実験室でも、最低は1本用意しておく必要があります。
- ロジック・プローブ:MSOのフロント・エンドにデジタル信号を入力する場合にロジック・プローブを使用します。回路基板の小さなテスト・ポイントに接続するために設計された、フライング・リードを含むアクセサリが付属しています。
- 電流プローブ:オシロスコープで電流プローブを使用すると電流が測定できますが、瞬時電力を計算して表示する