基板故障部品の絞り込み
故障の原因を追究するとき、また、修理をしなければならないとき、実装されたどの部品が壊れているかを判定しなければいけません。しかし基板に実装された故障部品の絞込みを行うことや、その特性を判定するのは非常に厄介です。
例えば写真のように基板に半田付けされた部品。この特性を正確に測定することなどできるのでしょうか?
基盤故障とデジタル・マルチメータ
修理や不良切り分けの現場ではしばしばデジタル・マルチメータ を用います。2本のプローブで回路上の電圧、電流、ある経路の抵抗を測定することができる基本的なDC計測器です。機種によっては容量、発振周波数、ダイオードの順方向電圧などを測定できるものもあります。
図2は図1の部品とその周辺の回路です。双方向ダイオードD1が、ある周辺回路CIR1, CIR2中に配置されています。D1をDMMで評価するとどうなるでしょう?例えば順方向電圧VFを測定した場合は、周辺回路CIR1, CIR2の影響を受けます。VFは0.1~1mA程度の電流を印加して回路の電圧を測定する手法が用いられます。印加電流はCIR1, CIR2に分流し一般にはVFは低下します。どの程度低下するかは周辺回路により異なり評価をすることは難しくなります。
基盤故障とSMU
ここでSMU(ソース・メジャー・ユニット)という機器を用いるとそれを解決できる場合があります。SMUはDMMと類似の電流電圧計の機能とともに精密な電圧電流源が内蔵され、幅広いレンジの電圧(または電流)を印加しながら同時に、印加されたデバイスの電圧・電流を測定することができます。SMUの特徴的な機能のひとつにガード機能があります。ガード機能とはSMUのHI側の電圧と同じ電圧を出力する精密電圧バッファです。ガードは測定治具やケーブル経由の冗長な漏れ電流を回避します。また測定経路の容量を低減して特に低電流時に応答時間を短くする効果があります。
基盤故障の見つけ方と見分け方の実例
ここではガードを図4のように接続しダイオードD1の測定を行います。ガードはSMUのHI端子と同電位を保ちSMUからCIR1, CIR2への電流の流れ込みを阻止します。CIR2への電流はガードが駆動します。ダイオードD1にはSMUからの電流のみが流れ込み、D1のIV特性を取ることができます。
図6は図4の状態で双方向ダイオードD1に対し電圧掃引を行ったものです。図6の左の例は片方だけVFが僅かに大きくなっているのがわかります。また右の例は明らかに正常な状態ではありません。
今回はこれが基板の故障の正体でした。基板上に実装された部品に対し、その部品自身や周辺回路部品を取り外すことなく特性の評価を行い、わずかな特性の違いも識別することができました。また故障箇所の特定ができました。
まとめ|基盤故障の見つけ方と見分け方
- 基板上に部品を実装したままIVカーブを取ることを試みました。
- ガードを使用することでSMUから周辺回路への流れる電流を阻止しました。
- 基板上の部品のIV特性を取得し異常を判別し、故障部品を特定することができました。
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